近年、新しい農業技術として注目を浴びている
「バイオスティミュラント」をご存じでしょうか?
実は作物は種の段階で収穫できる量が遺伝的に決定しています。
しかし生育中に、病気や害虫による「生物的ストレス」、
天候や薬害などによる「非生物的ストレス」を受けることに
よって収穫量が減ってしまうのです。
「生物的ストレス」を軽減するためのものが農薬。
「非生物的ストレス」を抑えるものが今回紹介する
バイオスティミュラントになります。
資料:バイオステイミュラント協議会HPより抜粋
バイオスティミュラント(Bio stimulants)…
直訳すると生物刺激剤。
日本バイオスティミュラント協議会では、資材の
起源別に6種類に分類しています。
① 腐植質、有機酸資材
② 海藻および海藻抽出物、多糖類
③ アミノ酸およびペプチド資材
④ 微量ミネラル、ビタミン
⑤ 微生物資材
⑥ その他
資材を単体または複合体で粉や粒、液状に加工し、
畑にすき込んだり、散布します。
これらを用いることにより、植物や
土壌が本来持っている自然な力を引き出し、
植物栄養素の取り込みを高めることができます。
また、植物の光合成機能の改善、根の活性向上
(水や養分の吸収力の向上)といったより良い作用をもたらし、
ストレスへの抵抗力を高めることが可能になります。
地球の人口は2050年には今より20億人以上多い95億人に
なると予測されています。
ところが地球の耕作面積には限りがあるため、食料を確保
するためには単位面積あたりの収量を上げていくしかありません。
また、地球温暖化に起因する気候変動問題により世界のあらゆる
地域で収量の低下が懸念されています。そこで従来よりもさらに
効率的に収量の増加が見込める資材としてバイオスティミュラントが
注目を集めるようになりました。
日本では、2018年に肥料や農薬を扱う8社による
「日本バイオスティミュラント協議会」が発足し、続々と
会員数を伸ばしています。バイオスティミュラントを広げるための
各種研究やセミナー開催のほか、製品の企画や法整備にも
取り組み始めており、今後もバイオスティミュラントの浸透に
向けた活動に期待が集まっています。
また、農林水産省が2021年5月に発表した
「みどりの食料システム戦略」でも農薬、化学肥料の
使用量削減に向けた技術開発の一環として、バイオ農薬、
バイオスティミュラントの普及が指摘されています。
日本ではまだ馴染みが薄いバイオスティミュラントですが、
世界規模でみるとその市場は年々拡大しており、2021年に
32億米ドルに達し、2027年には75億4,000万米ドルにまで
成長すると見込まれています。
なかでも、EUはバイオスティミュラント産業が特に盛んで、
2011年にはEBIC(The European Biostimulants Industry Council)
が発足されました。
また、2022年5月から施行された新肥料法では、適切な評価を
受けたバイオスティミュラント商品は、EU加盟国の基準を満たした
証「CEマーク」をつけて販売・輸出ができるようになりました。
これによりヨーロッパ市場では、より一層バイオスティミュラント
市場の成長が期待されています。
バイオスティミュラントは、植物本来の力を利用して
非生物的ストレスを緩和し、増収につなげる農業の新しい概念です。
さらなる気候変動が予測されている現在、農業を支える
新たな技術として日本でもさらに市場を拡大していくことが期待されます。
(参考サイト)
Biostimulants – Superfoods for Plants (israelagri.com)
日本バイオスティミュラント協議会 (japanbsa.com)
世界が大注目!新しい農業資材バイオスティミュラントの効果とは? | 施設園芸.com (shisetsuengei.com)/
「バイオスティミュラント」とは? 肥料、農薬、土壌改良剤との違いを解説 | AGRI JOURNAL
sunhope mailmagazine vol.37
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