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『日本を救う未来の農業ーイスラエルに学ぶICT農法』竹下正哲 著

著者の竹下正哲氏は拓殖大学国際学部の教授で農学博士。

サンホープとは大学内の農園で行われている

イスラエル式農法の共同研究をきっかけに、

イスラエルをはじめネパールやインドなど海外の

農業現場への視察同行、

拓殖大学国際学部農業総合コース+竹下ゼミと

山梨県立大学が共同で進めている

「ハタチの畑プロジェクト」など

様々なチャレンジを共有しています。

左:サンホープ社長 益満ひろみ 右:竹下正哲教授

 

日本の農業の問題として思い浮かぶ

高齢化、後継ぎ問題、収益率、自給率・・・

実はこれらは解決可能で

最大の問題、迫っている危機は「国際競争力のなさ」。

TPP(環太平洋パートナーシップ協定)、ヨーロッパとの

EPA(経済連携協定)の開始を受けて

安価な海外産農産物の輸入が拡大することは必定。

日本の自動車メーカーは世界を相手に戦って

いるからこそ、性能がよくて安いものを作れる。

農業も同じことで、安くて最高品質の作物を作れば

海外の農産物と勝負することができる。

日本産農産物の価格を下げるためには

生産方法や生産者の考え方を根幹から変える必要があり、

その手本となるのが砂漠の国・イスラエルのICT農法である。

とする本書。

 

イスラエルで生まれたドリップ灌漑技術は

ドリップ(点滴)のように、1滴づつ水をあげて厳密な

養水分管理を行うというもので、節水、収量の増加、

農薬の削減など様々な効用があります。

最先端農業を行うイスラエルでは、

様々なセンサー類をつなげて、作物の成長と

土壌や気象のデータを収集解析し、

ドリップかん水システムを通して

最適なタイミングで自動で施肥やかん水を

行うAI農業が主流となっています。

研究機関と企業、農家が連携してより収益の上がる生育方法の

研究や市場のニーズに合った作物の育成などを行い、

ビジネスとしての農業を展開しています。

 

おわりに(P241)より抜粋

「栽培方法を変え、生産効率を変えれば、見える風景が一変する。

生産効率が今の2倍、3倍になれば、すなわち1haあたりの収量が

今の2倍、3倍になっていけば、その分価格を

下げることができるようになってくる。価格が下がれば、

世界と対等に戦うことができるようになる。元々味は

世界一なので、価格さえ適正範囲に入ってくれば、むしろ

世界一強い農産物になることができる。すると、農業が

滅びるどころか、世界トップクラスの

農業大国になることもできる。」

 

栽培実験を通してイスラエル式農法の有用性を証明し

最先端農業の現場にも精通した竹下教授が

提案するイスラエル式のICT農法を知ると

農業への考え方が変わります。

食や経済の今を知るためにも必読の一冊。

ちくま新書 刊 本体価格840円+税

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