「人口問題」と聞いた時、何を思い浮かべるでしょうか?
「日本は高齢化が進み、出生率も低下し、人口が減るだろうな」とか、
「日本の農業従事者の平均年齢は66歳を超えて、20年後の
日本の農業は危ないな」とか、そのようなところでしょうか?
日本の人口は2055年頃には1億人を切っている、と
予想されています。日本だけを見ていると「人口問題」は
人口の減少と高齢化ということになるでしょうか。
世界に目を向けてみるとどうでしょう。
現在の世界の人口は77億人(国連報告書 2019年6月)と
されていて、2050年には97億人にまで増えると予想されています。
徐々に人口が減る国がある一方、今後も人口が増えるのは
アジアやアフリカの国々と言われています。
ここで問題となってくるのが食料供給です。
今の時点ですでに世界の人口の10%(約8億人)が
十分な食料が得られずに健康に影響を与えているとのことです。
(統計を取る機関、統計の取り方により数値は異なります)
様々な問題から農地(耕作可能な土地)の面積は減っています。
利用可能な水などの資源は増える見込みはありません。
人口は増えていく。大きな問題が起きる(すでに起きている)
のは目に見えています。
この人口問題、食料問題の解決策は何かという
問いに対しての答えが、「精密農業」であるといわれています。
「精密」と言っても植物工場のように温度や湿度や
CO2濃度を1℃、10ppm刻みで制御するようなことでは
ないようです。言葉の響きとは少し異なりますが、
与えられた資源を最大限活用して、無駄をなくし、
さらに生産性を上げるための『Precise』な管理、という
ことのようです。『Precise』という言葉には『精密』と
いう意味もなくはないのですが、この場合は『的確』の
ほうがしっくりくるでしょうか。
「精密農業」のシステムの一例に人工衛星からの
画像データと気象データを元にかん水管理を行うものがあります。
数日おきに上空を通過する人工衛星から画像を撮影し、
その画像を解析して作物の水分状態を把握し、気象データと
作物の水分要求量からかん水量を導き出す、というものです。
IsraelAgri Manna
http://www.israelagri.com/?CategoryID=520&ArticleID=1788
畑の中に土壌水分センサなどのセンサ類を必要としない、
センサハードウェア無しで行える精密管理、
ということを売りにしています。
違った方向から「精密農業」を実現している
システムもあります。植物(作物)の茎や葉にセンサを取り付け、
その収縮や温度、光合成速度などを元に
かん水管理を行う、という仕組みです。
植物が水(多くの場合肥料も液肥として同時に与えられる)を
欲しているときに的確な量とタイミングで与えることで、
植物を最大限健康な状態に保つ、ということです。
植物が健康な状態であることで収穫量が
増加する、品質が向上する、病虫害に強くなる、ということが
期待できるようです。
Supplant
メルマガvol.2で既出ですが、マンゴーの一例を紹介しておきます。
https://supplant.me/wp-content/uploads/2019/05/Mango-Board.pdf
限られた土地、水、そのほかの資源を最大限有効に
活用して、作物の生産性を最大限に向上させることでしか
迫りくる食料難に対応することはできません。
これまで無駄になっていた水を節約し、より広い面積で
耕作を行う、水を与えるタイミングと量をしっかりと管理して
より多い収穫物を得る、肥料などの資源の使用量を減らして
生産コストを下げる、環境負荷を軽減して20年後、30年後も
その土地で耕作ができるようにする。
小さいことを積み重ねていくしかなさそうです。
さて、20年後、30年後の日本のために何ができるでしょうか。
農業従事者が激減して、供給が減り、食料難の時代が
来ているかもしれません。
海外からの農産物で市場があふれ、世界社会の中で
他国への依存が強く、弱い立場になっているかもしれません。
他人事ではなく、そろそろ真面目に考える時が
来ているかもしれません。
sunhope mailmagazine vol.6
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