皆さん、お肉はお好きですか。
我々がいつもおいしく頂いているお肉など動物由来の食べ物は、
植物由来の食べ物に比べて、我々の食卓に届くまでの間に
より多くの温室効果ガスを排出している、という話は
聞いたことがあるでしょうか。
2021年9月『Nature Food』という学術誌にて
発表された研究によると、動物由来の食べ物は、
植物由来の食べ物と比べて、なんと約2倍の温室効果ガス
(CO2、CH4、N2Oの合計)を排出しているということが
報告されました。
(耕起により発生したCO2、牛のゲップや水田から発生したCH4、
畑地から発生したN2O、輸送時に排出されたCO2等を解析)
(参考)https://www.nature.com/articles/s43016-021-00358-x
こういった、環境に関する事実や健康面の考え等から、肉食から
菜食に移行しよう、というような動きが流行り始めているように感じます。
大豆ミート等の代替肉が、その良い例ですね。
しかし今、代替肉の先を行く、新しい概念が話題です。
それは・・・培養肉!
動物の筋細胞を培養して、なんとお肉にしてしまうのです。
そして、培養肉を生産するのが、細胞農業なのです!
環境に優しいのはもちろん、既存の畜産で必要とされる
飼料・水・土地の40分の1で製造できるということで、
将来の人口増加に伴う食糧需要の高まりに対処し、
また省資源化も叶える未来の農業として、期待が集まっています。
日本ではまだ市場に出回っていませんが、シンガポールが
2020年12月2日に世界発となる、人工培養鶏肉(ナゲット)の
販売(製造は米イート・ジャスト社)を
食料自給率向上施策の一環として承認したことで、世界中を驚かせました。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO66903520S0A201C2FFE000/
事実、シンガポールは2019年のGood Food Conferenceで
培養肉に対する支持的な姿勢を明確に宣言したり、
政府が代替タンパク質企業に莫大な投資を
行ったりと、世界を先導しています。
米コンサルティング会社ATカーニーは、培養肉市場は
2040年には約60兆円規模となると推計しており、
現在日本を含め世界中でベンチャー企業を中心に多くの企業が
参入し始めている、大変ホットなビジネスなのです!
参考:How Will Cultured Meat and Meat Alternatives Disrupt the Agricultural and Food Industry?
(C. Gerhardt, Gerrit Suhlmann, et al. Published 2020BusinessIndustrial Biotechnology)
今回は、細胞農業による培養肉に取り組む世界の
スタートアップ企業を、一部厳選してご紹介いたします。
■家畜培養肉に取り組むスタートアップ企業
モサミート(オランダ)
・世界で初めて培養肉ハンバーガーを開発した培養肉のパイオニア。
・2013年に1個3500万円のバーガーで話題を呼んだ。
・ウシ胎児血清除去に成功し、培地の大幅コストダウンに成功。
スーパーミート(イスラエル)
・培養チキンに特化したイスラエルのスタートアップ。
・工場の隣に、培養肉メニューの試食に特化した
レストランThe Chikenを設置し、培養肉の製造プロセスを見える化。
・1~2年以内にレストランでの販売、5年後に量産化を目指している。
\日本も負けていません/
インテグリカルチャー(日本)
・高コストな血清成分と成長因子を外部から
もってくるのではなく、内部で生産する
バイオリアクタ「CulNet System」を開発することで
コストダウンを可能にした。
・宇宙用調味料「スペースソルト(食べられる細胞培養液)」
「スペースソルト・ゼリーピクルス(宇宙でも食べられる)」を
提供するクラウドファンディングを実施している。
日清食品(日本)
・日清が取り組むのは、最も高度な技術を要する培養ステーキ肉。
・単に牛の筋細胞を培養するのではなく、独自の
積層方法を編み出し、本物の筋肉の立体構造の再現に取り組む。
・2024年中に縦横7センチ、厚さ2センチのステーキ肉を
生産する基盤技術を確立したい考え。
(2019年に1cm×0.8cm×0.7cmのサイコロステーキ状の作製に成功している。 )https://www.nissin.com/jp/sustainability/feature/cultured-meat/
\家畜の培養の肉だけではありません!/
■水産物に特化した培養肉スタートアップ企業
Finless Foods(アメリカ)
・サンフランシスコ発の魚を細胞から培養して
本物の魚肉を作るスタートアップ。
■培養材料に取り組むスタートアップ企業
ORF Genetics(アイスランド)
・培養肉の課題の1つ、生産コスト削減に
寄与する成長因子を開発するスタートアップ。
・幹細胞の増殖と分化をコントロールする役割を
持つ高コストな成長因子に代わる、大麦由来の
成長因子MESOkineの開発に成功。
Future Fields(アメリカ)
・有用で安価な細胞増殖用培地を開発している。
参考:
https://foodtech-japan.com/2020/11/16/cultured-meat-startup/
例を挙げていくとキリがありませんが、興味深い
ビジネスを行っている企業が目白押し。
日本でも、細胞農業・培養肉に関する学術集会
「第3回細胞農業会議」が今年8月に開催され、
研究開発がかなり進んでいるようです。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000006.000072660.html
培養肉が日本の市場に出回る日も近い?!
sunhopemailmagazine vol.27
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